平成16年度
熟年大学
第6回

一般教養公開講座
於:SAYAKA小ホール
平成16年11月18日


 
[マイナスこそプラスの種」
〜あなたが変われば社会も変わる〜



講師
プロップステーション
理事長
竹中 ナミ 氏

「チャレンジド(障害を持つ人を表わす新しい米語)を納税者に出来る日本」というキャッチフレーズで活動を続けています。 社会は一人では変えられませんが、一人が変わらなければ社会は変わらないのです。

                    講演の要旨


「プロップステーションの活動について、今まで少しでも耳にしたり、新聞などでご覧になった方いらっしゃったら手を挙げてみてください」

                      

「ほう・・・シーンとしていらっしゃる・・」
と言うことは、プロップステーションも竹中ナミねぇもご存じない方がおおい。
・・・これは話がいがあります。

私がやっているこのプロップステーションの活動は、コンピューターを使っています。  ITと呼ばれている情報通信の技術を利用する活動です。それを使いどんな人がどんなことをしているかは、障害が重くて家族の介護が必要である人とか、家族の介護が難しく病院や施設にいる方が、パソコン通信や、インタ−ネットのIT技術を使って、社会とつながり、自分に必要な情報を自分でゲットし、その情報を基に、知識を磨いたり、仕事につながる技術を身に付けて社会に出す・・・つまり仕事もすることを目指して生まれたグループです。

いまやパソコン操作や、通信をやった事がない人の方が少数派に入りますが、私達がこの活動を始めた14年前は、パソコンが一般家庭になくインターネットも存在していなかった。

そんな時代に、障害のある人が、自分にできることを世の中に発揮し、働きたいと考える活動が生まれたのだから不思議な事です。

私は、見聞きできるし話せるし、活動もできる。 しかし、プロップでコンピューターを学び、役立たせたいと思う障害のある人は、自分のコンピューターが、目や耳の代わりや、自分が動く距離を代行し、社会とのコミュニケーションをしているわけで、学ぶ必死さが違います。これは凄いパワーです。

14年前のインターネットも無いときに、このプロップステーションを一緒に始めた一人の青年がいます。 この青年は高校のラガーだったが、試合中に頚椎骨折で、左手の指先の上下、首を左右に90度くらい動かせることしかできない程の障害を負いました。 しかし考える力がある限り、これを磨いて社会復帰をし、働きたいと奮起したのです。

僅かに動く左手の指先で、大学受験に挑戦し、最終は大学院の理工学の博士課程も履修しました。 そして家業のマンション経営を見事にパソコンで運用する青年経営者となりました。 介護を必要としながら働くひととなったのです。 

今までの日本の福祉やボランティアの概念は、この青年をみていると間違っていた事に気付きました。 今までの福祉やボランティア活動と違った視点で、その人のやりたいこととか、残された可能性の方に着目して、それを科学技術の力で、世の中に出す活動を、この青年と一緒に始めた福祉活動が、プロップステーションの始まりです。

                   
   
私が最初に出会った障害の重い人は誰かというと、実は2月で31歳になった私の娘です。 重症心身障害という大変重い脳の障害を負って授かった。 色々な障害が重なっている状態の総称だが、視力は明るいくらいがかろうじて分かるが、物の形はわかりません。 聴覚は音の意味することは分からない。 声は出るが言葉は話せません。

しかし、私がこの娘から授かったことは、一人ひとり生きてゆくスピードが違い、一人一人その人なりの凄さ、素晴らしさがあることを知ったことです。 だから、全ての人がその人のできることや、やりたいことを少しでも出来るようにしたいのです。 見つけようとしたいのです。 そのためには、本人が変わらなくても社会が変わればいいのではないかと思うのが私の理屈です。

プロップは、活動をはじめて14年目ですが、6年前に日本で始めてコンピュータ情報処理を使う社会福祉法人の認可をうけました。 自分の身の丈にあった働きができる、自分が一番働き易い場所で、自分の働ける量だけ働ける仕組みを作りました。

そういうプロップの現状とか、国の制度が変わりつつあることを、7月1日にNHKが8分間の番組放映をしてくれました。 NHKの許可を得てCDロムにしましたので、ここでご覧いただきます。

                  
   

日本は世界一のスピードで少子高齢化が進んでいます。地球上のどの国も経験した事のないスピードです。 大量の団塊の世代が高齢に入ります。 65歳以上と15歳以下のひとや障害者を、日本では、従属人口と呼んでいます。  この考え方のままで進むと、日本経済は疲弊し、社会保障費の限界がくることは目に見えています。 

そのためにどうするかは、世の中の方が変わらねばならないということです。つまり、今まで従属人口といわれる福祉観を一度全部チャラにして、皆が出来る範囲の力をだして、無理なところだけを支えましょうと「人の意識と制度」を変えることなのです。 プロップステーションとは、そうのような実験プロジェクトとでもいえましょう。

プロップステーションは、IT技術を活用して、チャレンジドの自立と社会参画、特に就労の促進を目標に活動しています。 チャレンジドと言うのは最近の米語で、「神から挑戦という課題、あるいはチャンスを与えられた人」を意味し、障害をマイナスとのみ捉えるのでなく、障害を持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、あるいは社会のためポジティブに生かして行こう、という想いをこめた呼称です。

そのようなプロップステーションの活動がヒントとなり、国の行政や制度そのものを変えてゆこうとの動きがでてきてます。 私をここに立たせてくれたのは、まさに私の娘です。 あたかも私が娘を育てたようですが、実は娘が私を育ててくれたのがわかります。
人間には無駄な命はありません。 みんなが素晴らしくてその人の価値があります。 それをいかに引き出すかは、一人一人がやらねばねばならぬことです。
                 


11月講演舞台活花