平成14度
熟年大学
第八回
一般教養公開講座

於:Sayaka小ホール
平成15年1月23日


 【自然との共生】
−人間社会を生物圏の中に位置付ける−

講師
滋賀県立大学
環境科学部教授

仁連 孝昭 



私達は、何でも手に入る便利な生活に慣れ、
人間として大切なものをどこかに置き忘れてきたようです。
それは、人間も自然の一部であり、自然との共生を抜きにして、
人間は生存できないいう信念です。
これを取り戻すには、人間が生命として生きることの喜びを
取り戻すということです。 
この生命観の上に、人間社会そして経済の展望を描くことができます。







私の専門は経済学の中でも環境経済学、もう少し詳しく言うとEcological Economics(生態経済学)です。 自然の成り立ちの上に立って私達の経済や暮らしがあり、自然に根付かなくてはならないと言ったことを研究しており、同時に自然と共生するエコ村ネットワークを推進しております。

人間は生命圏の中で生かされてきたことを私達はあまり自覚してこなかったようです。 しかし、個々の生物体、生物種は生態系の一員としてのみ生存でき、生物は、地球の生命圏でのみ生存できることを先ず頭に入れておくべきでしょう。 

そして、生物の生命は、人間であろうと、虫けらや草であろうと、すべて差別されない公平な立場で尊重されねばなりません。

しかし、人間にとって都合の悪い役に立たぬ生物を減らし、役に立つ生物を増やした結果、都合のよい生物も減少させる事になり生態系の破壊につながっています。

人間中心主義の世界観と社会がもたらすもの


人間中心主義の世界観
  1. 人間を他の生物から切り離し特別な存在にする。
  2. 個人の欲望を満足させることを至上の目的にする。
人間中心主義による生態系と生命圏の破壊
  1. 人間にとって都合の悪い生命の否定(多様な生態系の否定)
  2. 物質循環の撹乱(栄養物質の偏在化による汚染と生物生産機能の悪化)。
  3. 生命圏の改変(地表植生の除去と単純化、非透水被覆、湿地などエコトーン破壊)
  4. 非生命圏から取り出された物質の生命圏での集積(重金属、CO2集積)
人間中心主義による人間社会の破壊
  1. 価値の多様性を認めない一つのスタンダードの優勢化。
  2. 意味の喪失。
  3. 人間同士が役立ちあう関係の非可視化。
  4. 自然は支配の対象であり、そこから感動を受け、学ぶことが軽視される。
人間中心主義による経済社会のいきづま
  1. 物質欲望充足の限界の存在と消費拡大のいきづまり。
  2. 価格競争の結果、高所得で消費需要の旺盛な地域での雇用縮小。  
このように人間中心主義的な社会を、今まで100年〜200年、特に最近50年間に作り上げたものが、最近行き詰まってきたのではないかと考えられます。 ではそれに代わる世界観、あるいは私達の社会をリードしてゆく考え方とはどうゆうものでしょうか。 それには、自然と共生する人間倫理を打ち立てて行く必要があると思います。 
 
自然と共生する人間倫理と社会の姿エコ村憲章
  1. 生命あるものに感動し、愛情を持つ生命倫理を育む。
  2. 未来への希望を育むことを最高の喜びとする。
  3. 地域にあるものを最大限に生かす文化を育てる。
  4. 環境を傷つけず、環境からの恵みを大切にする。
  5. 個を尊重すると共に、互いに支えあう関係を強くする。
  6. 人々に喜びを分かち合う仕事を育てる。
  7. 責任ある個人によって担われる、活力あるコミュニティをつくる。
そこで、次のような転換が今私達に求められていると思います。

人間中心主義から⇒Ecocentrism(環境中心主義)への試み、
その実験的なコミュニティーが【エコ村】


   ● 私の発語ですが、自考自築
       【Think by ourselves, build by ourseves】
   ● 生活の場としての地域の再構築。
   ● 有機物を循環する。
   ● 地域の水巡回を回復する。
   ● 外部エネルギーにできるだけ頼らない。
   ● 物を大事にする。
   ● 仕事をおこす。
  • 生命と生態系への共感
    • 人間の役割の体感
      • 未来への意欲と希望
        • 健全な社会
こういった姿が、21世紀の新しい理論でありましょう。


1月講演舞台活花

この講演要旨は、
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