第6回
一般教養科目公開講座
於:SAYAKA大ホール
平成30年11月15日

大阪湾の魚たち
~大阪湾の魚はなぜおいしいか~




大阪・泉州広域水産再生委員会事務局長
森 政次 氏

  

講演要旨
     大阪湾の特徴とそこに生息する魚介類についての話を皮切りに、大阪湾漁業の様子や講師がこれまで携わってきた仕事の裏話など、なぜ大阪湾の魚がおいしいのかを詳しく解説。
 
   

大阪湾の状況
 現在の大阪湾は一番長いところは70キロ、短いところは30キロで面積は1500平方キロである。明石海峡や紀伊水道の狭くなっているところは、流れが早く水深が120メートルと深くなっているが、湾の奥は淀川や大和川から運ばれた砂で浅くなっている。
 大阪湾では大阪と兵庫の漁業者が大阪湾漁業協定を結び、お互いに大阪湾を利用している。また現在では昭和42年に大阪湾漁業調整協議会を設立、入合協定を結び毎年更新している。大阪には北は大阪市から南は和歌山県境の岬町まで24の漁業組合がある。大阪湾では1日に2回潮の満ち引きがあり潮は行ったり来たりするが、全体的にみると潮は時計回りで北から南に流れている。関西空港が出来て潮の流れはかなり変わったようだ。昭和36年に堺泉北地域が埋め立てられ、昭和46年くらいまで南へと埋め立てが続けられた。結果として大阪湾では自然海岸が残っているのは約5%くらいである。ほとんどが人工海岸であり直立護岸で埋め立てられている。夏場は淀川や大和川からの水で表層は塩分が薄い高温になる。下は塩分が濃い低温なので海水が混ざらない。表層部は塩分が薄い水なのでプランクトンが多く、これらが死ぬと海底に落ちて分解する時に酸素を消費する、つまり夏場は湾の奥では底の方が無酸素状態になる。冬場は逆に低温になると重くなるので混合することになる。夏場、表層を泳ぐイワシなどの魚はプランクトンを食べて生き残れるが、低層にいるエビとか蟹、カレイとかは死ぬか低酸素水帯から逃れようと南にやってくる。漁師はこれを潮押しと言って、このような状況をとらえうまく網を入れるとたくさんの魚がとれることになる。

大阪湾の漁業資源
 さて漁業資源の話だが、大阪湾で過去に獲れた魚、昭和57年(1982年)に11万トンで内10万トンがマイワシ、この年は全国的にマイワシが豊漁で、全国で400万トン獲れた。これ以降マイワシは1万トンくらいまで減少する。イワシは70年周期説があって、爆発的に増えて徐々に減るというのを繰り返している。マイワシは黒潮で産卵するが増えてくると産卵場所が沖の方に行き、戻ってくるのが減ってくると言われている。今はマイワシが全国的にもどりつつある。今年は黒潮が大阪湾から離れているので、マイワシは大阪湾には入ってこず、ほとんど獲れていない。来年に黒潮が近づいてくれば、大阪湾にもマイワシが戻ってくるのかなと思う。
大阪湾で最近獲れている魚としては、カタクチイワシが8000トンから10000トン、後はマイワシとかコノシロとか春のイカナゴとかが多い。瀬戸内海は世界で一番漁業生産性が高い場所だが、さらに生産性が高いのが大阪湾である。しかし最近、海が綺麗になりすぎていて、これは下水道が整備され、排水処理ができるようになったのが原因であろう。
皆さんは汚れた水と言うが、我々の認識はリン窒素が豊富な栄養源に富んだ水であり、これが大阪湾に流れてきた時には魚がたくさん獲れていた。海苔の養殖などにも低栄養の水は悪影響があるが、今年は台風も来たので海水がかき回されて海苔にはいい効果になっている。
さて大阪湾の漁業生物は約225種プラスαであるが、漁獲対象としては約160種で、いろんな魚が獲れる。大阪湾で生まれ育った魚、つまり定住種でコノシロやスズキ、イカナゴといった魚、産卵や成長のために入ってくる入り込み種でマルアジとかサワラ、タチウオやマダイといった魚がいる。他に迷い込みで入ってくる魚もいる。最近では南方系の珍しい魚も入り込んでくるようになった。去年は60キロのマグロが網にかかり、毒の強いヒョウモンダコとかシマイシガニも見られるようになっている。

大阪湾の漁業 ~大阪で行われている漁業の紹介~
中型まき網漁業は、
 19トンくらいの2艘の船で巾着網を仕掛ける。網を上げる時底の方を絞るので巾着網というが、色見船で魚群を見つけて、船に指示を出す。1000?位の網を5分くらいでセットし、徐々に絞りこんで、フィッシングポンプで吸い上げた魚を運搬船の(氷が入った)魚槽に入れる。とれる魚はマイワシ、カタクチイワシ、コノシロ、アジ、サバが主となる。
船びき網漁業は、
 2艘の網船で表層を曳く。袋網の部分が3ミリと目が細かく、イカナゴの子供やマイワシやカタクチイワシの子供(シラス)を獲る。多い時には1万トン獲れていたが最近は3000~4000トンの漁獲量となっていて、低位安定している。
底びき網漁業は、
 底にいる魚を獲る漁法で、大阪では大きく分けて2つあり一つは石げた網、長さが180センチくらいの鉄の枠に重り、石をかませて、これを5丁位つけて、やりだし棒(ヒノキの10メートルくらいの棒)につないでいる。漁具の下に爪がついていて、これで下の泥や砂をかいて驚いた魚等を袋に入れる。カレイの仲間、イヌノシタ、ガザミやシャコ、エビ類が獲れる。昔はサルボウ貝だけで1万トン位獲れた年もあったが、今は底びき網漁業全体で2000トンを切っている。このサルボウ貝も埋め立てで砂浜がなくなり今はほとんどいなくなっている。海を埋め立てて産業が発展するのはいいことだが、こうして生息場所がなくなる生物も出てくる。
刺網漁業は、
 夕方に網を底に沈めて翌朝網を回収する。夜は暗いので魚が網に刺さる。夜動く魚は多いのでこうした習性を利用して魚を獲る漁法である。ヒラメやカレイそしてメバルやカサゴも獲れる。最近は漁獲量が少なくなっていてカレイ類では昔は400トンくらい獲れていたが今は50トンくらいになっている。水が綺麗になったこと、産卵場所が少なくなったこと、そして温暖化で水温が上がってきたことが原因と考えられている。

私が選ぶ魚10選
 さて本日は主婦の方も多いと思うので、私が選ぶ魚10種ということで紹介する。
先ず3月のイカナゴ、春を告げる魚で、生のイカナゴは高く、通常1キロ1000円くらいだが、昨年は1キロ3000円くらいしていた。それでも好きな方は生シラスを買ってくぎ煮や釜揚げを作る。私の場合、イカナゴの釜揚げはオリーブオイルにニンニクをスライスしたものをきつね色になるまで温めて鷹の爪を入れて、これを釜揚げの上にかけて食べる。朝のパンに非常に合っておいしい。
 次に4月のマダイ、普段は60mから80mの水深の深いところに生息しているが、春になると産卵のため大阪湾の浅いところ、りんくうタウンとかにやってくる。この時期、桜鯛ともいわれ、白身の魚なので刺身で食べる時は、1日位置いて熟成させてから食べるとおいしい。
 5月になると、サワラが産卵のため大阪湾に入ってくる。大きなものは10kgを超え、新鮮なものを刺身で食べると絶品である。背の青い魚は熟成の必要はなくすぐに食べた方がおいしい。1日位経ったものは味噌漬けにするのが定番で美味である。
 次は唐揚げで有名なガッチョ、標準和名はネズミゴチ、ハタタテヌメリの2種類で、えさにがつがつとがっつくことからガッチョと呼ばれる。骨を真ん中にして松葉のように唐揚げにするとビールのおつまみに最適である。
 マコガレイは12月から1月にかけて産卵するが、夏のちょっと前あたり、6月ごろが一番おいしい。刺身で食べることは少ないが、刺身もおいしいし 定番は煮つけや唐揚げである。
 ハモは、梅雨の水を飲んで旨くなると言われ、天神祭りの時期に食すとおいしいと言われる。湯引き、焼霜、天ぷら、ハモ鍋等の料理があるが、私はフライが好きだ。ス-パーのハモは日が経っているのでおいしくないので、私はハモを専門に取り扱っている店から買っている。鮮度が違うので非常においしい。
 アナゴは台湾の南の海域で産卵し、春先にレプトケファルスの形で大阪湾に入ってくる。高知で“のれそれ”を食べるが、これはレプトケファルスの状態である。白くて透明で細長い形をしている。資源的に考えると小さなものを食べるより、大きくしてから食べた方がいい。泉州地方では天ぷらにするが、天つゆでなく青ネギと醤油で食べる。
 真アジは10月が旬で、紀伊水道から秋に大阪湾に来遊するアジは脂ののりも最高である。たたきやなめろうもいいが、やっぱりアジフライをウスターソーで食べるのが最高である。
 アカシタは冬が旬の魚で、本当の名前はイヌノシタという。フランス料理ではシタビラメのムニエルとして食されるが、断然煮つけが一番おいしい。煮つけにすると身離れも非常によく、食べやすい。青空市場や南の方に行くとスーパーの1/3から1/4の値段で売っている。交通費を計算して一度買いに行ったらどうか。
 夏が旬のキジハタは、別名あこうと呼ばれ、大阪湾で漁獲される最高級魚である。トラフグよりも美味であり、薄造り、刺身、煮つけ、鍋で食されるが、値段はフグと同等である。我が家では1匹買うと、2枚に下ろして下ろした方を刺身にして片方を煮つけにしている。

栽培漁業への取組み
 水産課で漁業者の人と関わってきて60歳で定年退職したが、その間に漁業振興基金というところに3年間出向していた。退職後は栽培センターに行った。関空の補償事業で作ったところで水産試験場と一緒に30憶円で建設した。岬町にできたのでここに5年間通った。朝8時から始まるので家から約2時間弱かかった。毎朝6時に家を出て7時45分位に到着する毎日でまたやれと言われてもできないが、体は丈夫になった。
 栽培漁業とは減ってきた資源を人工的な手段で増やして放流すること。栽培漁業には、親魚養成➜採卵➜種苗生産➜中間育成(稚魚を育てる)➜放流という流れがある。このため100トンとか40トンとか、魚種や魚のサイズに合った様々な水槽が必要である。
 大阪府がどの魚種をどれだけ種苗生産して放流するかという5年間の栽培基本計画を立てる。親を買って卵から稚魚を生産する場合と、最初から稚魚を買ってくる場合がある。
 魚によって卵の大きさが違い、キジハタの卵は非常に小さく、ヒラメ、クロダイ、オニオコゼと大きくなっている。卵が小さいと稚魚の口は小さく、餌も小さくないといけないので非常に飼育が難しい。ヒラメやクロダイは口も大きく育てやすい。オニオコゼは卵も口も大きいが、蝶々みたいな胸びれがあって魚同士が絡まって大量に死んだりする。日本で栽培漁業が成功したのは、通称ワムシをエサにしているからである。キジハタはメスから雄に性転換する。キジハタは1匹の雄が数匹の雌を従えてハーレムを作っているが雄がいなくなると、大きな雌が雄になってハーレムを引き継ぐことになる。クロダイは逆に小さい時は雄で大きくなると雌になる。これは魚個々の生物的な戦略というか長い間の遺伝的進化によるものである。卵から放流までのキジハタの生残率は10%程度である。キジハタは1990年代では10トンくらい捕れていたがどんどんと減ってきており、このため栽培漁業で放流を重ね、今では5トンから7.5トンの漁獲量になっている。
 キジハタは生残率が非常に高く、放流場所からあまり移動しないので栽培放流魚種としては優等生である。漁業者の皆さんも魚を獲るだけでなく、小さな魚は放流するようにしたり、遊漁者の皆さんにも小さな魚は放流するようチラシを配布したりして資源管理をしている。
 今は第7次の栽培基本計画でアカガイ、ヒラメ、マコガレイ、キジハタとしており技術開発魚種としてトラフグを入れている。夏のアコウ、冬のタラフグと言われ、かっては大阪湾で100トンくらいの水揚げがあったが、この計画立案時には1トンもなかった。何とか減少したトラフグを復活しようと対象魚種に入れた。トラフグの特徴としては生まれたところに戻ってくる、そして砂に潜る、卵を砂の中に産むので砂浜がないと駄目である。トラフグは天然ではカキとかイガイを食べるし、他の魚も追っかけて食べる。栽培では魚が1センチから2センチになると最初は上の前歯を切り、2週間後には下の前歯を切るといった歯切りという作業が必要で結構手間がかかる。フグは生まれた時からフグの形をしている。孵化後70日で8㎝になり、このサイズになると放流することが出来る。飼育の時はフグが噛み合わないように水槽の中で結構速い流れを作ってフグが一定の方向を向いて泳ぐようにする。放流の時は標識をつけるが、トラフグの場合は焼き印標識といい、酢で表面の皮膚を焼く。大阪で放流したものは丸が二つあるとか、兵庫で放流したものは丸が一つとか、どこの県が放流したものかはすぐわかるようになっている。トラフグは10000匹放流したら、3000匹くらいに標識をつける。栽培センターを辞めてから、大阪湾で放流したトラフグが再捕されたところを所員に聞いてみたら、その場所は姫路と岡山だった。これは東シナ海へ行く系群になるので大阪湾に帰ってくる可能性はかなり低いと思われる。このトラフグの卵は山口県産のものを使ったので東シナ海に行ったのかもしれないと考えて、私の後継者に来年は愛知県の水産試験場の卵、つまり東海系群の卵を使って放流してみてくれと頼んでいる。回遊する魚は、回遊する場所の海のにおいを覚えていて生まれた場所に戻ってくると言われている。卵を変えたから東海系群になるという可能性は低いと思われるが、やってみる価値はあると思う。もし東海系群の卵を大阪湾で放流し、それが大阪湾に戻ってくればいいと思う。栽培センターでの5年間はこうした仕事をしてきた。

大阪の水産業再生に向け、入札・競りの導入
 大阪・泉州広域水産業再生委員会の話だが、イワシ、シラス、イカナゴを獲る船びき網を中心とした14の漁協が加盟し事務局は岸和田市にある。大阪府と兵庫県は昔から入会い協定を結び大阪湾の魚を獲ってきた。船びき網で獲れるイカナゴ、シラスについては大阪と兵庫は売り方が違う。大阪は相対取引で、漁師は港で、引き取りに来た仲買人や加工屋さんに魚を渡す。加工屋さんは持って帰り、自分で釜揚げシラスや縮緬ジャコを作ったりして、売った値段からかかった経費を引いて(原価計算をして)漁師に渡す。漁師が自分の獲った魚の値段がわかるのは1週間後になる。平均的にシラスもイカナゴも兵庫に比べ3割方安い。大阪の漁師は朝早くから夜遅くまで働き、獲る魚の量でこの薄利をカバーしてきた。魚の資源も減ってくる中で、収入を増やすには売り方を変えなければいけないということで、兵庫県と同じように競りができるよう、水産業再生委員会の水産業再生プランに盛り込んだ。
 相対取引と入札競りの違いについてメリット、デメリットを説明する。
 相対取引では、漁師さんはいつでもどんな量でも引き受けてもらえるメリットがあり、仲買さんは自分で値段を決めることが出来る。デメリットとしては漁師は値段がわからない。仲買人は自分の欲しい量を集めるためにいくつかの港を回らねばならないし、質の悪いものでも引き取らねばならない。
 入札制にすると漁師はすぐに値段がわかるし、仲買人は好きな品物を好きなだけ買えるというメリットがある。一方漁師は今までは自分の港に帰ったらよかったが、入札場まで魚を運ぶ必要があるし、仲買人は競りの値段が高く、競り負けて買えないこともあるというデメリットがある。
 再生プランは5年間で漁獲収入を10%アップする目標があり、そのためには入札場や冷蔵庫といった施設の整備が必要で、荷捌き場や海外輸出する場合はマイナス30度の冷凍施設も必要である。我々の再生委員会は岸和田が本拠地なので、岸和田から関空まで車で15分、全国に配送できる利便性があった。いきなり相対から競りになったのではなくて、平成26年に岸和田を中心に26統の船びき業者が集まって入札に参加、周りの漁師はみんな様子をみていたが、1年目にたまたま高い値段がついて2年目は45統と参加者が増え、そうすると仲買人も増えてきてさらに値段が上がるということになった。3年目は68統と大阪府の全部の船びき網漁師が集まり、見事に相対から入札へと取引を変えることが出来た。秋の時期は大体11時頃に網上げをするし、夏だと10時頃に網上げをする。網上げはその日の漁が終わりということで申し合わせをしている。月、火、木、金と週4日操業し、水、土、日は休む。船曳は夏だと朝5時から10時くらいまで日に3回網を引くが、1回目の網引きで今日は漁が多いなとなると、兵庫、淡路、大阪の代表者が電話で「今日の漁は多いな、9時に網上げしようか」とすぐに決めて、ラインで沖にいる操業者に伝えるというやり方で資源管理をしている。

荷捌き・鮮度保持施設の整備
 新しく造った荷捌き施設は1200平方メートルで、庇は漁獲物に雨がかからないように岸壁から1メートルほど出ている。シラスの競りの際、仲買人はカゴに手を入れるが、これは水揚げされた魚が氷が良く効いて鮮度がいいか、シラスの中に他の魚の稚魚、エビやカニが混じっていないかをチェックするためである。その後木札に白墨で入札価格を書いて入れる。今は共同運搬船を走らせて海上で漁師さんから魚を集めるということもやっており、漁師さんの港への魚の水揚げを支援している。共同運搬船で入札場に運ぶのに30分位、入札は5分もかからないくらいなので、30分位で沖にいる漁師さんは自分が獲った魚がいくらで売れたかがわかる。また漁師さんは無線で連絡を取り合い、どこで獲れた魚がいくらで売れたかといった情報を共有している。スマホ等の普及で情報の伝達がスピードアップしている。
 昔は漁師が自分の情報を隠していたが、今は有益な情報を隠さずにオープンするようになっている。こうして仲間でルールを決めて、有効な方法をみんなで採用した結果、今岸和田の入札場で揚がってくるシラスは全国一と言われ、値段も全国一の値段がついている。
 急速冷凍庫や凍結保管庫といった鮮度保持施設を整備することで、カタクチイワシのブロックは養殖魚のえさとしてキロ30円で取引されるが、袋に入れて韓国向けに輸出すると(アナゴの筒のエサになる)キロ70円くらいになる。大阪湾のボラも食習慣はないが、中国向けに食用で売ると国内の倍くらいの値段がつく。こうして施設整備後は輸出量は1.4倍(漁獲量の2割)、金額では1.7倍(漁獲量の3割)になっている。今中国がものすごい勢いで魚を食べ始めているが、漁労技術がまだまだ遅れていて、冷蔵庫なんかも整備できていない。だから日本でエサにしかならない魚でも、中国に持っていくとすごく新鮮で食用に振り向けることが出来る。再生委員会の中の巾着組合では、入札場の前に仲買人の食堂「きんちゃく家」がある。朝の5時から昼の2時までの営業だが、ここで生シラス丼を出したところ、あまりにもおいしいとの評判でテレビでも放映された。他に地蔵浜マルシェという鮮魚を売る店は、街で買うより半額位の値段である。年に1回10月末に、大漁親子まつりといってマイワシを配ったり、魚のつかみ取りを行っている。

事業成功のための人材とは
 事業の話になるが、我々が施設整備してから、他の県から見学に来られる。比較的上手く行っている事例として活動内容に対して水産庁長官賞をもらった。見学者からは「なぜうまくいったのですか」とよく聞かれる。私は事業成功のための条件として、次のような4人の人が必要と考えている。
1.走る人
 漁師の世界なので理屈でなく、ビジョンを持ちリーダーシップのある人。理解力よりも納得力(理解してもらうより納得してもらうこと)が大事である。
2.計算する人
 荷捌き施設に4億5千万円かかった。最初は津波避難用も考えたが、計算すると12億円かかるので、これだと借金しても返済できないと思い計画を変更した。事業の採算性や返済能力を計算する人が必要である。
3.字を書く人
 国の補助金をもらうには結構理屈をこねないともらえない。理屈と根拠の上に立ったものを書類として書ける人、そして施設が出来た後の会計検査院のチェックに備えて管理基準・体制を作れる人
4.応援する人
 自分がやりたいと思っても予算をつけてあげましょうと言ってくれる人。水産庁が予算をつけるのであればそこに圧力をかける団体、水産庁の外郭団体で補助金を持っている団体が応援してくれないと施設を造る事業はできない。行政も土地の利用計画等で協力してくれないとできない。私は字を書く方に分類されるのかなと思っている。皆さんも熟年者なので自分はどのタイプだったか考えたらどうか。

大阪湾の魚はなぜおいしいか
 最後になるが、大阪湾の魚はなぜおいしいか。マイワシは紀伊水道から大阪湾に入ってくる。播磨灘のイワシと比べると一目瞭然で大阪湾のイワシがおいしそうである。大阪湾のイワシは油の量も多いが、旨味成分やイノシン酸、アミノ酸の分析をしても多いという結果が出ている。淀川や大和川があってプランクトンが大量に発生し豊富なエサを食べた魚がまるまると太る、だからおいしいのだ。浜寺水練学校の懐かしい思い出があり、いつか大阪湾でもかってのような遠浅の砂浜ができることを願望している。




平成30年11月 講演の舞台活花



活花は季節に合わせて舞台を飾っています。


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