第9回
一般教養科目公開講座
於:SAYAKA大ホール
平成29年2月16日

いま、宇宙がおもしろい
〜映像で太陽系などの宇宙を探索する〜




理学博士
猪瀬 正雄 氏

  

講演要旨
     昔から、人々は、夜空を眺めては宇宙に様々な思いを巡らしてきました。宇宙はあまりにも広大で、「知るほどに謎は深まる」と言えて、話題は尽きません。そんな宇宙を、最新映像とともに探索してみようと思います。
 
   

 宇宙の話はスーパーコンピューターまで動員して研究していて難しいところがありますが、様々な映像を見ながらわかりやすく説明したいと思っています。

みんな知らずにただで宇宙旅行中
 現在5分間の無重力体験が2000万円かかりますが、実は私たちは地球の自転速度や太陽の公転速度、天の川銀河の端を太陽系として回っている速度、アンドロメダ大銀河に引っ張られている速度などを計算しますと無料で時速140万キロの宇宙旅行していることになります。

3つの宇宙速度
 1 第1宇宙速度:人工衛星などを打ち上げるときに必要な速度。時速2万8千キロ
 2 第2宇宙速度:地球の重力を脱出して宇宙間を飛ぶための速度。時速4万3千キロ
 3 第3宇宙速度:太陽の重力を脱出するための速度。時速6万百キロ。

 世界の宇宙機構にはNASA、JAXA、ESA、ロシア連邦宇宙局などがあり、それぞれホームページを見ると多くの映像を楽しむことができます。現在ISSが高度400キロ、時速27000キロで90分掛けて地球を一周していますが、高度と回転速度は遠心力と万有引力の引き合いで決まります。日本の実験棟「きぼう」の中では様々な実験が行われています。

宇宙ゴミ
 人間の経済活動にともないいろいろなゴミが出るものですが宇宙でもそれは深刻です。1957年のスプートニク以来米ソ間の宇宙開発競争の結果、国力を付けた他の国々の参加もあって膨大な数の人工衛星が打ち上げられた。自由落下で燃え尽きなかった23000個が赤道の上空に漂っています。その破壊力は質量100キロの冷蔵庫が時速198キロで飛んでいるのと同じであり、現にISSの6重の構造の窓も上から2枚破壊されている状態です。日本の宇宙船「こうのとり」が物資を運搬した帰りにゴミを持ち帰って自由落下で燃え尽きるのですが、最近漂っているゴミをからめとる実験をしました、しかし失敗に終わっています。人間は宇宙でもごみと戦っています。

何で宇宙を見るか
 従来の可視光線による望遠鏡以外にさまざまな波長の電磁波を利用した望遠鏡が開発されています。電波望遠鏡、赤外線望遠鏡、可視光線・光学望遠鏡、紫外線望遠鏡、X線望遠鏡、ガンマ線望遠鏡など。電磁波以外で見るものには、ニュートリノ望遠鏡、重力波望遠鏡などがあります。

 ニュートリノは小柴教授がカミオカンデで史上初めて観測に成功した。これによりノーベル物理学賞を2002年に受賞。弟子の梶田教授も同じ分野で受賞したが、師弟で同じ分野での受賞は極めて珍しい。さらに重力波による観測も可能です。重力源の周りは空間が歪み、光(重力波)の進路が曲げられるというアインスタインの説に従えば、手前の銀河の重力により後ろの銀河の光が曲げられて、今まで見えなかったものが見える。昨年この重力波がアメリカで観測されアインスタインの一般性相対性原理が証明された。

ハワイ マウナケア
 
ハワイ島は晴天率が高いので各国の望遠鏡が設けられている。優れた日本の反射望遠鏡(スバル)は、自動歪修正器(アクチュエイター)で放物面を常に正しく保つ技術を持っている。鏡面を磨く技術も優れていてその誤差は関東平野に新聞紙一枚である。

 ハッブル宇宙望遠鏡
 1990年、スペースシャトルで打ち上げられ上空600kmを90分で周回しながら様々な天体を撮影している。幾度かの修理を経て、貴重な画像を地上に送り続けている。昼夜では200℃近い温度差があり膨大な数の金属部品が膨張・収縮をするため、機器が安定するまでのおよそ5分間2回は観測できない。残りの80分の間に各国からの要請を受けて様々な観測を行っている。結果はNASAのHP GALLERYで公開しています。

アルマ電波望遠鏡群
 南米チリのアタカマ砂漠標高訳5,000mの高地に64台の電波望遠鏡が設置されていて、コンピューターの働きでそれぞれの直径は7mから14mでありながらあたかも直径が16kmの巨大な一台の望遠鏡のような働きをさせることができます。これによって原始太陽系の現象を発見しました。

ハッブル:Edwin Hubble(アメリカの天文学者 )
 宇宙を観測していて,1929年に「遠くの銀河ほど速く互いに遠ざかっている」という法則(ハッブルの法則)を発見。宇宙が膨張していることを突き止めた。ガモフ:George Gamow (ロシア系アメリカの天体・原子物理学者) 宇宙が膨張しているなら、時間を戻せば、やがて小さな領域に天体が集まる。宇宙はそこから大爆発した(ビッグ・バン)と考えた。

アンドロメダ大銀河
 我らの「天の川銀河(Milky Way)」から230万光年のところに位置し、サイズは長径20万光年でおよそ2倍。その重力により我らの銀河が引かれて40億年後に衝突すると予測されています。

宇宙線
 宇宙にはプロトン、ニュートロン、パイ中間子等々の様々な素粒子が宇宙線として飛び交っています。藤原定家が「明月記」の中でも記述している超新星爆発からも多くの素粒子が飛んできます。大気圏でこまごましたものに分解されますが、現在は例えばミュー中間子を利用して巨大な構造物例えば浅間山をレントゲンのようにとらえて火山の噴火予知に利用できます。さらにピラミッドの構造や福島原発の壊れた内部なども観察できます。

 太陽系には4つのガス惑星と4つの岩石惑星があり、以前はその仲間と言われた冥王星は軌道が同じ面にないことや非常に長いことなどから今は準惑星に分類されている。

4つのイオンエンジンを搭載した「はやぶさ」
 打ち上げられた「はやぶさ」は地球の軌道に乗りスイングバイという方法でスピードアップしてわずか500m大のイトカワという小惑星の軌道に乗った後それに着陸。その精度は大阪からチリの首都で飛んでいる特定のハエを落とすのに等しい。帰りは地球の軌道に乗り損ねさらに4年かけて、しかもイオンエンジンが全て故障し、残った機能で一つのエンジンとして働き、結局7年後に母なる地球に帰還の途次、JAXAスタッフは大気圏突入で燃え尽きる直前に、「はやぶさ」を回転してカメラを地球に向けて撮らせた。

1光年という単位
 これは天文の距離の単位ですが、距離では9兆4500億キロ、時速15万qとしても7200年かかります。隣の地球に似た惑星まで4.2光年と簡単に言いますがボイジャーに乗っても3万年近くかかります。とても近いとは言えません。そして宇宙で見えるものは今どうしてるではなくすべて過去のものであることも認識しておく必要があります。今見えている隣の銀河大マゼラン星雲も17万光年前のものです。アンドロメダ大星雲は250万光年前の姿を見ているのです。

太陽風
 太陽からは、宇宙空間に、物質質量に直して毎秒100万トンものエネルギーが放出されていて「太陽風」と呼ばれています。猛烈な速さのプラズマ(原子が核と電子バラバラ状態)流で地球軌道辺りで秒速300〜900km/s、平均秒速450km/s、時速162万km/hくらいになる。温度も100万K相当で、それを惑星の磁場が遮る。磁場と荷電粒子の衝突で発生するのがオーロラである。この太陽風が地球上の酸素を吹き飛ばし月との位置関係が整えば月面に酸素が届くという記事がNatureに出ましたがこれも注目に値します。さらにこの風を利用してソーラーセイル実験機「イカロス」が宇宙を帆船のように飛翔中です。

ボイジャー1,2号
 打ち上げは原子力電池への基地住民の不安があり少し予定より遅れましたが、ガス惑星4兄弟のGrand Tourスイングバイを利用して加速、40年の旅路の後ボイジャー1、2号は今太陽風より星間風が優るエリアに達し太陽系を脱出。50年は働く原子力電池を搭載し、様々な惑星に接近して貴重な写真を送り続けている。遭遇するかもしれない別の文明への金板のメッセージを積んでいる。

太陽系の仲間
 金星の美しさは分厚い二酸化炭素の層であり、地面は観察できないが、地球も温暖化が進めば同じようになるのではないかと言われている。表面温度は450度。NASAマゼランによるレーダー観測ではその素顔は美しさとは真逆。JAXA「かぐや」(月の衛星として飛んでいる)撮影による満地球。この美しい地球上でむなしい争い事が絶えないのは残念。「かぐや」のお陰で正確な月面の地図ができていますが、レアメタルの存在に各国の先陣争いが予想される。
 火星には「キャナール」があると発表されたとき「人工物の運河」と解されたためにそれが独り歩きを始め文明やタコのような住人という話になったが、これは単に「溝」があると言いたかっただけであった。
ハレー彗星
 彗星には太陽風で飛ぶイオンと白い塵からなる2本のしっぽがある。ハレー彗星の軌道はNewtonが微分・積分を発明して、新しい重力の力学を創始して間もなく友人のハレーが1682年に出現した大彗星の軌道をNewton力学で計算して76年周期であることを予言した。予言通りに、1759年に現れた。しかし、ハレーはその前に無くなっていた。

しし座流星群
 流星群は彗星の残した浮かんでいる塵に地球が突っ込んで燃やしていく時の光であって、向うから地球に飛び込んでくるものではない。相対的に「飛んでくる」ように見えるだけである。

小惑星
 50m以上の16万個の小惑星は番号を振って監視中であるが、50m以下のものが2011年7時間の差で地球のそばを通り過ぎて行った。かろうじて惨事をまぬかれたのである。衝突しそうなものには衝突体をぶつけて軌道を変える試みをNASAはしている。メキシコ・ユカタン半島、小天体衝突の痕跡が、人工衛星による探査でジャングルに囲まれた大きな凹み(直径180kmほど)が発見された。周辺の地層からレアメタル・イリジウムが多く発見され、衝撃の規模から、6,550万年前、直径10kmの小天体が時速6万km/hで激突。大量の粉塵が天空高く舞い上がり、1年で地球を覆い、日射量が大幅に落ちた。高さ数百メートルの超巨大津波が内陸深くまで到達。食物連鎖が途絶え、恐竜を始めとする北半球の生物の80%が絶滅したと言われている。

巨大ガス惑星「木星」
 自転わずか10時間、63個の衛星を持つ。太陽になり損ねたと言われている。大赤斑の渦の中には地球が2,3個入る大きさ。シューメーカー・レビー彗星が木星の重力で21個に分裂して1列になって衝突。一個でも地球が壊滅する大きさ。今から20年前のことでした。2016年7月4日、NASAは木星探査機JUNOが計画通り木星の周回軌道に入ったと発表した。JUNOは発射後5年の歳月を経て木星に到達。イオ、エウロパ、ガニメデなどの衛星が木星の周りをまわっている。
天王星
 理由は謎ながら軸、環、衛星すべてが横倒しのガス星である。最先端の難問は「暗黒」物質と「暗黒」エネルギー

 調べるほどに謎は深まる。銀河の回転速度がなぜ落ちないか。宇宙の加速的膨張の原因は何か。人類がわかっている物質は宇宙全体の5%でしかなく、95%は謎である。さらに、この宇宙という超巨大構造と素粒子という極微の世界を論ずる素粒子論的宇宙論が呈せられている。図示すれば以下のようである。
 




平成29年2月 講演の舞台活花



活花は季節に合わせて舞台を飾っています。


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