第8回
一般教養科目公開講座
於:SAYAKA大ホール
平成29年1月19日

いつまでも元気で歩けるために
〜骨・筋肉・こころの保ち方〜




国立病院機構大阪南医療センター 免疫疾患センター部長
橋本 淳 氏

講演要旨
     今、100歳を超える長寿の方が増え続けています。人生を最大に楽しむためには、骨と筋肉と心を健康に保ち、元気で歩ける事が大切です。是非その方法を知って実践していただけたらと思います。
 
   

はじめに
 今日のお話は日頃、私が健康について考えている事をご紹介します。
最初に、今、日本で100歳以上の方が(百寿者:英語でCENTENARIAN)厚労省2015年9月1日の報告で、61,568人がおられ、その殆どが女性で、どんどん増えています。また26年後には約60万人になると言われています。
平均寿命が延びていますが健康な期間が短い不健康な期間が長くなりつつあり、特に女性の方が長くなってきている。そういう時代である事を認識してほしい。
関節リュウマチと骨代謝疾患を専門に32年間医者をしていますが、南医療センターで働く目的は近畿地区でリュウマチ関連の最高の医療の出来るところでチーム医療が可能な場所である事、と同時に、私が取り組んでいる中で、身体機能維持による地域の健康寿命の延伸がライフワークの1つである事です。

1回しかない人生を健康で楽しく過ごす一例として3つのテーマを取り上げます。
 1.骨折はお薬で予防できます。
 2.筋肉を減らさないで。
 3.心のケアをしましょう。

1番目ですが骨折はお薬を使用する事で減ります。それは、健康寿命と生命寿命を短くする2つの骨折部位の背中の骨と足の付け根の骨のいずれもお薬で発症を減らせます。骨折防止に有効なお薬が1990年代に登場し、アジア、欧米、豪州等の疫学調査の行われている諸外国ではすでに足の付け根の骨折の発生は2000年以降から減少しつつありますが、日本は増加しており骨折予防に成功していない唯一の国であります。日本ではなぜ足の付け根の骨折が減っていないのか、それは適切な検査をしていない、必要なお薬を処方していない事が多い。お医者さんが悪いという事ですが、最近はきちんとした医療を提供する先生が増加してきており、日本も骨折防止の優等生国を目指して変わりつつあります。では、骨折の対策とは、背中の骨と足の付け根の骨が若い健康人を100として何%減っているかを知る事で、骨密量が若い人の80%以下であればそろそろお薬を使う事を考えます。
しかしお薬が効きにくい方の特徴が3つあります。
 1 お薬をきちんと使わない方
 2 栄養摂取の少ない方・バランスの悪い方(好き嫌いをなくす)
 3 歩かない方(毎日外歩きしてタンパク質をとって筋肉を作る)

次に筋肉を減らさない。骨折はしないけど、筋肉で身体を支えたりバランスがとれなくなり不安定な状態の方がたくさんいます。筋肉の量、筋力の低下とともに身体機能が低下してきた状態を「サルコぺニア」といいます。筋肉を鍛える坑重力筋には3つの筋、大腿四頭筋、中臀筋,背筋があります。
骨折を防ぐ事は必要ですが、筋肉が弱くなる事を防ぐ、回復させるお薬はまだ開発されていません。唯一ビタミンD不足が筋肉を弱くする要因であると解っているのでお薬で解消できます。筋肉を作るにはアミノ酸が必要で、タンパク質を摂取していないと筋肉は作れません。また、「筋肉と頭はつかわないと弱くなる」ので、弱くならない様に歩く事を勧めています。そんな中で、筋肉量・筋力・身体機能の回復を図るお薬も開発中で、その効果と副作用の判定が臨床的に実施されており(治験といいます)、10年とたたない内に実際にそのお薬を利用でき、身体機能維持を考える時代になるという事で、頭の隅に置いておいて下さい。
実は、骨や筋肉を守る前に最も大切な事は心のケアです。日々骨や筋肉を守るのを楽しみながらの結果が出ないとうまくいきません。そこで「楽しむ」ための一番の方法は「今、している事に一生懸命になること」です。それは講話等からヒントをえた「幽霊さん」の事です。
幽霊さんの特徴は
 1 おどろ髪を引いている。―――未練がましく過去に執着する、過ぎてしまった事を心にのこす。
 2 手を前に垂らしている。―――迷い手、不安手、いまだ来ぬ未来を心配しとりこし苦労している姿
 3 足がない。  ‐―――まさに地に足をつけていない、今を生きていないとう事
この3つは、生きている人間はこうではあってはなりませんよという反面教師の特徴です。そして、過去も未来も捨てて「今」をしっかり生きましょうという教えです。この教えは、ローマ詩人、哲学者、松岡正剛さん達も言っています。また、「今」に目を向けて取り組む事を、江戸時代の儒学者貝原益軒先生の「楽訓」という書物から教わった事があります。この中で人間の心理として「人間は、楽しもうなんて思わなくても、誰でも自然に楽しい心が湧きあがって来る様に生まれついている。」ただ、これを抑制してしまう事があります。それは
 1 私欲、外欲
 2 礼がないこと
 3 人のおろかなることを怒ること
 4 理に暗いこと
 5 分外をうらやむこと
 6 従容として迫らず」が守れていないこと
以上の6つの抑制をする事が書かれています。この抑制がうまく行くためには「幽霊の教え」をクリアしていく事が大切です。具体的に今を生きるという事は人生を楽しく生きる、前後際断していないと絶対に楽しめないということです。また、楽しみを増強するには人と共に楽しむ事とも言っています。まとめますと、楽しむというのは自分で楽しもうて思わなくても、抑制するものがなかったら勝手に湧いてくるもので、湧いてくる様な生き方をする。幽霊さんと益軒先生の教えで、心は保たれ自ずと前向きになり、お薬を使うのも、歩くのも、栄養の取り方を工夫するのもどんどん楽しくなっていき、骨と筋肉を保つこともうまくいくと思います。

《講師未見承》




平成29年1月 講演の舞台活花



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