平成18年度
熟年大学
第七回

一般教養公開講座
於:SAYAKA小ホール
平成18年12月21日

 
近畿の防災・危機管理



近畿地方整備局 防災対策官
中村 則之 氏

                    講演要旨
最近多発している自然災害について、その概要を報告すると共に、近畿地方整備局の取り組みを紹介します。 近い将来必ず発生するといわれている【東南海・南海地震】についてその特徴を紹介し、東南海・南海地震から身を守るためにどう行動したらよいか、皆様と一緒に考えます。
                       
1.我が国の国土の状況

 日本列島は南北2,000kmに及ぶ細長い国土で、その中央部を山地で分断され、国土の約7割を森林・原野が占めている。また、いろいろなプレートが重なりあったところで、異なった地質が混在した複雑な地形のため、絶えず土砂災害などが発生している。
 一方、年間降水量は世界平均の約2倍に達する。海岸線の近くに平野があり、面積ではわずか1割の河川の氾濫区域に、人口の半数と資産の3/4が集中している。
つまり、我が国は脆弱な国土と厳しい自然条件のもとにあるといってよく、次の通り要約される。

①国土形状  南北2,000kmに及ぶ細長い国土
②四 島    海峡による四島の分断。多数の島しょ部
③脊梁山脈  国土の中央部を山地が分断
④構造線    中央構造線、糸魚川-静岡構造線が南北に走る
⑤平 野    海岸線に狭い平野(国土全体の約14%)
⑥軟弱地盤  ほとんどの大都市が軟弱地盤の上に
⑦地 震    日本とその周辺で世界の地震の約10%が発生
⑧豪 雨    多雨(年間降水量1,714mm、ヨーロッパの約2倍)。河川勾配が急
⑨積 雪    国土の6割が積雪寒冷地域(多くの都市が年間累計降雪深4m超)


2.我が国の防災・危機管理

 国の組織としては内閣府が防災行政を担当している。災害に関する法律としては災害対策基本法がある。防災に関する基本的な方針は、平時には内閣総理大臣を長とする
中央防災会議があり、地方では各都道府県・市町村に防災会議が置かれ、防災に関する取り組みを決定する機関になっている。災害発生時などの非常時には、対策本部が設置され、さまざまな災害に適切に対処している。

これらの防災に関して、国土交通省が受け持っている役割は、次の通りである。

国土交通省の役割

○災害予防
 ・直轄管理施設(河川、道路、港湾)における巡視、点検、維持管理等の実施
 ・河川、堤防の整備
 ・信頼度の高いネットワーク道路の整備
 ・港湾施設の耐震化対策
 ・ハザードマップ等事前情報の提供
 ・訓練、出前講座、シンポジウム等の実施による災害対応力向上
○応急対応
 ・被害状況の迅速な把握と提供
 ・建設工事業者への復旧工事の指導、監督
 ・建設コンサルタント業者への復旧対策調査の指導、監督
 ・応急対策に伴う資機材の提供
○復旧・復興
 ・災害箇所における復旧工事の実施


3.最近の自然災害の現状

 
私は平成16年4月から近畿地方整備局企画部で防災対策官として勤めている。
平成16年は近畿を含め全国でも水害・地震が多い年であったが、その年を振り返って、自然の怖さ・災害の怖さを見ていただければと思っている。
先ず、台風だが、日本本土には平均的に毎年2~3個の台風が上陸するが、16年には過去最大の10個が上陸した。出水期で雨の多い6月の台風6号に始まって、最後は近畿地方に大きな被害をもたらした台風23号まで、台風による災害の多い年であった。
ここで近畿の代表的な災害について振り返ってみたい。

16年 7月 福井豪雨、1時間70mmを超える集中豪雨で足羽川の堤防決壊
16年 8月 奈良県大塔村、国道168号線(五条~新宮)での地すべり
16年10月 台風23号、兵庫県円山川の堤防決壊など
16年10月 新潟県中越地震、M6.8の地震
        川口町で震度7、小千谷市などで震度6強
16年12月 国外ではスマトラ島沖地震・インド洋大津波発生、死者約23万人
17年 8月 ハリケーン カトリーナにより米国ニューオリンズ市の7割が水没


4.近畿における具体的懸念

 60年前(1946年)の今日、12月21日午前4時19分、潮岬南方沖を震源とするM8の大地震が発生した。昭和の南海地震である。大きな被害予想がなされている東南海地震・南海地震はこれと同じ現象で、この時は全国で1300人あまりの人が亡くなり、多くの家が倒壊した。

まず、地震には次の2つがあることを憶えておいて下さい。

海溝型地震(プレート境界型地震)
・M8クラスのものが多い
・周期的に発生
・被害が広域
・津波を伴う
 東海地震、東南海・南海地震はこれに属する

内陸型地震(活断層型地震)
・いつどこでどの程度の規模で発生するか不明確
・M7クラスのものが多い
 大都市直下型の可能性もある(阪神淡路、福井地震など)
 *M(マグニチュード)は「1」違うとエネルギーは20倍以上違う
上町断層や生駒断層にずれが起きると、ここ大阪狭山市でもかなり大きな地震が発生する可能性がある。
先ほど日本は地震が多いといったが、地震はユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリッピン沖プレート、北米プレートの4枚が重なりあったところで多く発生している。遥かハワイの沖で生まれたプレートが移動してきて、日本のところで潜りこんでいる。このフィリッピンプレートがユーラシアプレートに沈み込むところでよく地震が発生している。ここを南海トラフという。

ここで過去の大地震を整理しておくと、

1605年 慶長の大地震
1707年 宝永地震(M8.4)
1854年 安政南海地震(M8.4)・・・安政東南海地震とは32時間遅れて発生
1946年 (昭和)南海地震(M8)・・・(昭和)東南海地震(M7.9)から2年遅れて発生

今世紀前半にも確実に発生するといわれているのは、安政地震から150年を過ぎており、いつ起きてもおかしくないというのが根拠になっている。また(昭和)南海地震からも60年経っており、今後
30年以内に発生する確率が東南海地震 50%南海地震 60%

ここで東南海・南海地震の特徴を整理しておくと、

1)広域的な震源域
震源域(固着域)は、東海、東南海、南海それぞれの震源域に分かれるが、これらを同時に震源として発生する場合と、複数の地震がタイムラグ(昭和は2年間、安政は32時間後に発生)をもって発生する場合がある。

2)発生は周期的
100~150年の周期で確実に発生する。

3)長周期の揺れ
阪神淡路大震災と異なり、長周期の揺れが想定される。我が国の大都市は、このような長周期の揺れの経験がほとんどないため、高層建築物や長スパンの構造物への影響等が懸念される。

4)大津波の発生
所によっては10mを越えるような高さの津波が数分のオーダーで来襲する。津波は周期的に何度も来襲し、第一波が必ずしも一番高いわけではない。 


5.近畿地方整備局の取り組み

 近畿地方整備局では、平常時の河川・道路などの日常点検にはじまり、災害時には保有する機械力を動員して応急復旧にあたるほか、ヘリコプターや1400箇所の固定カメラなどによる情報の収集と伝達・配信を行っている
また、実際の災害を想定した水防訓練や津波総合防災訓練を実施するなど、自治体や関連機関等との連携強化にも注力している。


6.おわりに

 避難などといったソフト対策で命は守ることはできるが、それだけではなかなか財産は守れない。貴重な財産を守るには、河川や道路の整備が不可欠になってくる。災害復旧に実際に当たっていただくのは資機材を持った地元の建設業の皆さんが支えになっているのではないかと思っている。

よく、
自助・共助・公助といわれるが、まずは自助。「自らの身の安全は自ら守る」という考え方に基づいて、一人ひとりが自分の命や生活を守ることが第一であろう。
次いで
共助。隣人等と協力して地域を守る地域での連携。
勿論、国・府県・警察・消防といった行政機関やライフライン関係機関をはじめとする公共機関の役割、つまり
公助も必要ではあるが・・・。
阪神淡路大震災における救助の内訳として、「自助7割・共助2割・公助1割」であったといわれている。


最後によく言われる「心得」をお話して終わりにしたい。

大震災のときの心得

 ・テーブルや机の下に身をかくしあわてて外へ飛び出すな
 ・大地震1分過ぎたらまず安心
 ・テレビやラジオをつけて地震の情報を
 ・近づくな、自動販売機やビルのそば
 ・気をつけよ、山崩れと崖崩れ
 ・避難は徒歩で荷物は最小限に
 ・余震が起きてもあわてずに正しい情報に従って行動を
 ・不意の地震に、日頃の用意

津波に対する心得

 ・強い地震(震度4以上)を感じたとき、または弱い地震であっても長い時間ゆっくりとした地震を感じたときは、直ちに海浜から離れ、急いで安全な場所に避難
 ・地震を感じなくても津波警報が発表されたときには、直ちに海浜から離れ、急いで安全な場所に避難
 ・正しい情報をテレビ、ラジオ、広報車などを通じて入手
 ・津波注意報でも、海水浴や磯釣りは危険なので行わない
 ・津波は繰り返し襲ってくるので警報、注意報解除まで気をゆるめない



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