平成17年度
熟年大学
第4回

一般教養公開講座
於:SAYAKA小ホール
平成17年9月15日

 ソドム化する日本を熟年が救えるか
〜医療・福祉現場からの提案〜



講師
医真会 理事長

森 功 氏

                    講演要旨

平均的日本人は、衣食住ばかりか生活総体が世界最高の贅を尽くすほどになっています。 平和と物質的反映は結果的に人面獣心のヒトを増やし、虚偽、欺瞞、独善がはびこっています。 熟年が作り出したこの現実、どう処理するのか? 迎寿命までの任務です。
                

今、医療現場は大変な状況になっています。 皆さん方がそのような現場に遭遇してやっとご理解いただけるものです。そのような方が居られない場合は、どこか遠くの出来事であまりご存知ありません。 しかし被害者の身になると、たいへ不幸な環境になることになります。 裁判に訴えてもなかなか社会の耳に聞こえてきません。

この問題も、日本国民の人間の権利を国家がどこまで守るのかという視点での捉え方が必要です。 しかしこのようなことが政治の場で語られたことはありません。

私たちが経験し培ってきたいろいろなことを、できるだけ寿命の続くかぎり発揮したいと思うし、その意味でも日本の社会のピンチをどこかの場で是正したり、あるいは次世代に譲り渡せるような元気をつくりたいと思っています。

今日お話しすることは、医療事故から見たいろな状況をお話し、それから、医療裁判という当事者にとっては大変なストレスになる問題についてお話しします。

                  

残念ながら医療事故は起こります。 

その場合、誰かが分析して、被害を受けられた患者さんと、われわれ医療側に同時に情報をキチット提供して、医療側に過誤があればすぐ謝罪に入る。それからお互いが分析して二度と起こらないようにする等の根本原因分析からの対応をとると同時に、患者さんに対しては損害賠償を含めて対処してゆかねばなりません。それを裁判などで争うことなしでやっていこうするシステムが地域に必要です。


日本の医療費は、国民総生産の8%=30兆円といわれています。これは文明国では無茶苦茶に低い。 しかし日本の厚生労働省は、日本の医療費は高い、高いといっています。 日本の公共事業への投資はダントツ多いのに・・・です。 これが爛熟した資本主義の多くの腐敗因子を生んでいる例です。
              
爛熟した資本主義では、ニューソドム化現象を生み出すのかもしれません。 ヒトが社会の中心であるという原則を放棄するのです。 ひいては、民族の理念や、宗教性の放棄、人間としてのモラルなどの民族・国家意識の喪失が、日本人ー国民性の放棄をもたらしています。

ソドム化の原因

社会

資本主義の発展⇒高消費、拝金主義
日本的モラルの破壊⇒人間・組織・ソフト
IT化⇒知的生活の変化
教育環境の変化⇒子どもの常識の変化

人間

⇒消費の義務化・安易な錬金=消費者金融
⇒家族・友人・年齢差・教師
⇒紛争化・組織エゴ・利己
⇒劇画化・言語訓練放棄・思考の停止・チャット悲劇
⇒孤立化・偏差値と差別・教師と教育のレベル低下

一日一食の貧しいケニアに比べて私たちは、豊かで幸せな社会でありますが、人間自身は非常に小さく寂しくなっています。 消費が煽られるのでいつまでたっても満足感が充たされないのです。 

医療や福祉現場でのソドム化

国民皆保険制度の破綻:自己負担増
医療の品質管理の遅れ:事故の多発
医療施設の無統制:医療費無駄使いと品質の劣化ー運不運医療、大都市・地方の差別
信頼関係の喪失⇒紛争化⇒賠償金争い

医療制度の課題はなんでしょうか。

・医療費は医療機関の分析では使い方が課題
・病院が9000もある文明国はない
・出来高払いで野放図な診療所医療
・保険収入が低ければ支出も適切に

日本の医療費について一言を

医療界は事故の海です。
明日もまた事故は起こります。医療事故は組織事故です。
JCQHCの登録医療機関でも533の医療機関が登録し報告しています。

ここまでは公表されていますが、どういう事故であり、どうしたら防げるかは出していません。日本のレベルはここまでです。 しかし、日本の病院の有害事象として、11.3%が事故として起こっているのも事実です。 10人に一人の患者がなんらかの事故に会っていることになります。  ハインリッヒの法則とは、1件の事故の背後には30件の類似した不詳事故があり、さらにその背後には300の関連する非安全行為があるとしていますが、それに気づくのは事故後なのです。

医療事故は、人間がおこすヒューマンエラーですから、常におこし得るものです。 したがってエラーを起こしにくいようにするのがわれわれの務めです。

医療事故の質的改善には、患者参加が必須で、セカンドオピニオンの重視が大切です。
日本の医師がどんな事故を起こしているかということは、まず最初の患者の情報収集から問題点の抽出、つまり紹介状を読んで、話をして診察をして情報収集する⇒日本の医療事故で一番多いのは、情報収集から問題点を抽出する鑑別診断の段階が出来ていない点です。 

事故具体例の紹介   省略

このような事故の防止には、繰り返し繰り返しの定期的指導が必要なので、この点で熟年の皆さんの努力をお願いしたい。  
ヒューマンエラーを起こす前に、ちゃんと組織が管理しておく必要があるのです。

日本の医療裁判は右肩上がりで増えています。 普通の裁判では70%〜80%ですが、医療裁判では患者側は30%くらいしか勝訴していません。 しかし問題は、医師や病院を刑事訴追することで、医療事故を刑事罰で問うこの国の理性が問われています。

各国の例紹介      省略  

                

ではどうしたらよいか・・

患者は自分に関する情報を知る権利があります。 最も妥当で標準的な治療、診療を受ける権利がすべてあります。 なんらかの過ちが犯されたときは、それを公開し自分に対して提示される権利を@法律で認めることが大切です。

A医療事故が起こったときには第三者的にキチット鑑定できるような監査機関を作らねばなりません。 B医療者の審判制度としての情報公開と、C医療被害者救済制度について、具体的にどこがお金をプールしてどこが出すか・・・これらの4点が大切で、これがわれわれが提案している紛争外処理の段取りです。 

これをやっていただいたら国民はいかに安心して医療を受けられ、しかも医療者の側も緊張感をもってできるかということです。

そこで始めて品質が上がって、それでも事故は起こりますが影響はかなり少なくなると期待しています。






9月 講演の舞台活花