平成15年度
熟年大学
第4回

一般教養公開講座

於:SAYAKA小ホール
平成15年9月18日


 【揺れ動く日本列島】



講師
元大阪府立大学歴史研究会会長
八木 伸二郎 


近畿地方には活動度の高い断層が集中しており、古記録にも数多くの地震被害が見られます。近き将来、プレート境界地震が発生し、大阪湾岸を襲うことが予想されますが、それは津波を伴う大地変となるでしょう。
講演の大綱
揺れ動く日本列島

兵庫県南部地震は阪神地区に大災害をもたらしました。
それまでに日本列島全域の地震活動は
1993年1月  釧路沖地震
1993年7月  北海道南西沖地震
1994年10月  北海道東方沖地震
1994年12月  三陸はるか沖地震  
 
・・・と北海道・東北で大地震が続発しており、兵庫県南部地震発生後も
伊豆半島、伊豆諸島、喜界島と日本列島は揺れています。

世界的にみても、近年、
サハリン地震、メキシコ地震、インドネシア地震、中国地震と地震活動は活発です。

近畿地方は戦後の1946年の昭和南海地震が発生して以来、大きな被害を伴う大規模地震を体験していなかったため、兵庫県南部地震は、近畿地方にも大地震が起こる事を改めて教えてくれ、いかに地震防災対策が必要であるかを身に滲みて思いしらされました。

近畿三角地帯

歴史的には奈良時代以降、しばしば近畿地方を大地震が襲い、多くの地震被害の記録が残されていますが、兵庫県南部地震の発生までは、地震活動の平穏期を過ごしてきたに過ぎぬ事を思い知らされました。

近畿地方の敦賀湾を北方の頂点として、琵琶湖、大阪湾、伊勢湾を含み四国ー紀伊半島を横断し、日本列島最大の活断層である中央構造線を底辺とする三角形の地帯は、東方からの太平洋プレート、南方からのフィリッピン海プレートがユーラシアプレートに乗っている日本列島の地下深部に沈み込む動きにより、数多くの活断層が形成されています。近畿地方の内陸地震が其れらの断層の反復活動性と深く結びついているであろうことは、今回の阪神大震災をもたらした淡路島北端の野島断層の断層運動と関連して容易に想像できます。

この近畿三角地帯ほど活動度の高い断層が集まっているところは、日本列島にてもそう多くはありません。 過去の地震を記録している古文書から拾い上げると、
416年  充恭天皇5年地震
1510年 応神天皇陵を切り裂いた永正7年地震
1586年 天正13年地震
1594年 慶長伏見地震

がありますが、このような内陸性地震のほかに、周期性がかなりはっきりしている南海トラフを震源とする巨大地震が、100年〜150年を周期として繰り返し発生してきています。

このタイプの地震は、広範な地域に甚大な地震と津波の被害をもたらすものであり、最近では1946年に発生した、マグニチュード8.0の昭和南海地震があります。

内陸部における地震活動の引き金

南海地震の発生周期を100年と考えれば、来たるべき巨大地震は今世紀の半頃であり、内陸部に於ける地震活動は21世紀であろうと予想する考えが支配的であり、今回の阪神南部地震は早すぎる地震活動の活発化であったのかもしれません。

過去の事例によれば、阪神大震災の発生により内陸部に於ける地震活動の引き金が引かれ、今後内陸部にて地震活動が頻発する可能性の高い事が論じられています。

今後大阪湾沿岸を襲う地震は、マグニチュード8クラスの巨大なプレート境界地震が予想されており、大地は激しく揺れ動くのみならず、津波が大阪湾に襲来する大地変です。 

既に昭和南海地震よりなりの年数を経過し、内陸地震の活発化の引き金が引かれた今、大阪湾の沿岸都市が津波の洗礼を浴びる日が迫っている事になります。

大阪湾岸を直撃する津波

最悪のシナリオを想定すると、かって商都大阪を襲った宝永津波、安政津波の大惨事を超える大被害を蒙る事になります。 昭和南海地震の被害は高知県にて最大でしたが、その以前に襲来し大阪を直撃した安政南海地震においては、防潮堤もなかった商都大阪は津波により大災害を蒙っています。

来たるべき南海地震に対して、大阪湾沿岸都市は万全の備えはあるのでしょうか。地震、津波による災害は、都市の近代化に伴って震災の程度は大きくなっています。 地震災害の大部分が人間社会のいわゆる効率化を求める近代化とやらによって、都市に集中する人間、臨海地域の開発、物流センターの集中、ジャングルのように錯綜した脆弱なライフラインに依って惹き起こされている事に気付きます。地震災害のかなりの部分が人災であると言われる所以です。

科学技術と行政の両面により其の対策が今ほど急がなければならない時期はありません。

大阪湾岸に襲い来る南海地震の前兆を掴んで、地震の予知に成功し、災害の軽減に努めなければなりません。南海道地震から57年を経過しており、仮に過去の周期通り、地震発生がほぼ100年であれば、地震までには僅か数十年しか残されていません。

地震発生のシミュレーション

大阪府の想定している被害予測を見てみると、150キロ離れた紀伊半島沖を震源として、マグニチュード8.5程度の地震発生を想定して、大阪府下一円の震度予想が為されており、地盤の弱い埋め立て地、低湿地域においては震度6-7で揺れ動く事になります。 もしシミュレーションの結果通りの災害が生じれば、阪神大震災以上の大災害となります。

仮に近い将来地震発生の予知が可能となっても、地震の発生を食い止める事は出来ません。地震発生までに残された時間は限られています。我々は来たるべき災害に備えて、万全の処置を現時点から講じなければなりません。

科学技術をもって災害に立ち向かう以外に方法はなく、この科学技術、工学の水準を高めて今より以上の防災都市の建設に一歩をふみださなければなりません。 防災対策は技術だけの問題でなく、社会、経済、政治などを含む総合的な観点から取り組まねばならない事は言うまでもないでしょう。


講演中の八木氏
    


9月講演舞台活花

当日、大津市総務部人事課及び建設部道路建設課から
大阪狭山市へ職員研修に来市され、
当市の高齢者福祉事業について
熟年大学一般教養公開講座を
参観されました。





開演前の舞台袖で
大阪狭山市熟年いきいき事業について
説明する森副代表