平成15度
熟年大学
第2回
一般教養公開講座

於:Sayaka小ホール
平成15年6月19日


 【高齢者に多く見られる眼疾患】

講師
近畿大学名誉教授・医学部顧問
大鳥 利文 


高齢者に多く見られる眼疾患としては8つの疾患があげられます。
  1. 結膜炎、瞼板腺炎を伴う角結膜乾燥症
  2. 老視
  3. 白内障
  4. 緑内障
  5. 老人性円板状(加齢)黄斑変性症
  6. 糖尿病性網膜症
  7. 網膜中心動脈閉塞症
  8. 網膜中心静脈閉塞症
これらの診断と治療法についてスライド投影を交えて解説します。

講演の大綱


結膜炎、瞼板腺炎を伴う角結膜乾燥症

年をとると慢性結膜炎、瞼板腺炎、角結膜乾燥症が多くの高齢者におこります。とくに眼瞼の瞼板腺と呼ばれる脂肪の分泌腺炎症が続くと膿が溜まるようになり、慢性の結膜炎が治りにくくなります。また年をとると大半の高齢者で涙腺の機能が低下してくると涙液減少症がおこり、さらに角結膜乾燥症になります。 また瞼板腺の分泌物の脂肪の質が悪くなると、涙液膜破壊時間が短くなり、物が時々ボーッと見えることが多くなります。
                  
老視

水晶体は虹彩でできた瞳孔の後ろにある凸レンズの形をした蛋白質よりなる組織で40歳をすぎると、この水晶体の硬度がまして、水晶体を支えるチン小帯がゆるんでも水晶体の厚みが厚くならず、近くのものが見えにくくなります。これを老視と言います。

白内障

また、60歳を過ぎると、水晶体の中心部、皮質、後部の蛋白質が変性して混濁してきます。これを老人性白内障といいます。老人性白内障は手術をすれば角膜、硝子体や網膜、視神経が正常であれば視力はよく回復します。白内障手術法や手術機械は近年著しい進歩を遂げました。昔は白内障手術の後は厚い硝子のメガネがコンタクトレンズをかけるの常でしたが、20年ぐらい前から眼内レンズと言うプラスティックのレンズを挿入するようになり、眼内レンズの度数を選べば、メガネなしか、必要としても度の弱いレンズで視力矯正できるような眼に仕上げられるようになりました。

緑内障    

40歳以上の初老期の17人に1人、70歳以上の7人に1人に緑内障が見られる事が報告されています。 老人健診の普及と共に緑内障の発見率が高くなっています。 緑内障には閉塞隅角緑内障開放隅角緑内障の二つの型があり、前者では急に眼圧が上昇し、眼痛、嘔気、視力障害、虹視などの症状が発現し、救急病院に入院し、原因が緑内障であることに気付かないで失明してしまうことさえあります。 しかしこのタイプは早く正しい診断がついて、手術をすれば治ります。 問題は後者のタイプの開放隅角緑内障で眼圧が低く、正常あるいはむしろ低眼圧でいつの間にか中心の周りの視野に見えないところ(暗点)ができるタイプです。 日本人にはこのタイプが極めて多く診断治療が手遅れになってしまうことがよくあります。

緑内障の治療法としては、まず眼圧を正常値かそれ以下に下げる事が大切です。 このためには点眼薬を何種類か点眼するか、内服薬、注射薬の投薬を受けるか、眼内の水(房水)の流れを良くするような手術を受けますが、アポートシスといって網膜からでて脳の第一次視中枢までの神経線維の自然死を防ぐことは容易でありません。 緑内障の治療法は色々ありますが、現在でも病気の進行を食い止めることは非常に難しいと言わざるを得ません。従って早期発見早期治療が大切です。
    
              

老人性円板状(加齢)黄斑変性症

老人にもストレスによっておこると言われている厄介な眼底の疾患に老人性円板状(加齢)黄斑変性症という病気があります。 この疾患は眼球の後方の中心視力をになう黄斑部の中心窩と言われる部分の近くに浮腫や出血がおこり視野の中心部が見えなくなる病気です。

老人性円板状(加齢)黄斑変性症では浮腫で始まることもありますが、多くの場合網膜出血が起こりますので視野の真ん中が全くみえなくなります。 最近網膜回転術とか病的な部分に薬剤をしみこませその部分だけレーザー光線で焼く手術法が開発されましたが、現在でも治療が極めて難しい疾患です。
年をとると水晶体の後の硝子体と網膜の間が離れる【後部硝子体剥離】という現象も多くの人におこり、これが起こると「蚊が飛ぶ(飛蚊症)」を訴えます。 飛蚊症は網膜剥離や眼内の炎症の始まりのこともあったり、硝子体出血の始まりである場合もありますので「蚊が飛ぶ」のが増えるようであれば眼科を訪れて眼底検査をしてもらうことを忘れないでください。

糖尿病性網膜症
網膜中心動脈閉塞症
網膜中心静脈閉塞症


網膜の出血や虚血を起こしやすいこれらの症状についてはスライド写真をお見せします。(解説省略)
  
    


6月講演舞台活花